目先の結果よりそのプロセスの中に必要なものが秘めている
モーニング娘やAKB48の振り付け担当の夏まゆみ先生が、ビジネス書『エースと呼ばれる人は何をしているのか』という本を出している。
たまにテレビで拝見するこの方に、前から興味があった。機会があればぜひ読んでみたいと思う。
夏さんは、芸能界で大成するアイドルとしての資質について、独自の視点を持っている。踊りという点でも、ゼロからの子、裸の子をあえて選ぶ、と言う。
踊りは練習すれば誰でも上手くなる。 必要なのは、個々の気概や懸ける思いになる。
前田敦子さんにはそれが携わっていた、と見ている。
口で「頑張ります!!」というのは誰でも言える。 「絶対合格したいです!!」と声高に主張している子に限ってすぐ辞めるそうだ。
ダンスの審査では、最初に16小節くらいの振りを踊るように指示をする。練習時間を経て、審査員の前で本番という流れである。
夏さんは、本番でのダンスの出来を全く見ていないで、本番までの“過程”を重視すると言う。
全くやる気のない練習をしている子や周りの子たちの出来ばかり気にしている子もいる。
その中で前田さんは、貪欲に振りを覚えてやろう、という鬼気迫る雰囲気で練習に臨んでいた。そして、周りの子たちの出来など全く気にするそぶりを見せず、自分のことだけに没頭していた。
その集中力をみて、 「この子はきっと芸能界で生きていける」と思ったそうである。
短期間であったが、私はお習字(書道)の先生をしたことがある。
上手くなれる子とそうでない子のちがいは、手を持って書いてあげるとすぐにわかる。
上手い子は力の抜き方がいい。こちらに委ねているだけではなく、意志を持ってついてくる。
うまく書けているようでも、突っ張って力を入れる子は伸びしろが小さい。
そのために、力の抜き方を教える。そのコツがわかると、変わってくる。
はみ出してもかまわない。目先の結果ではなく、小さくまとまらないことが大事だと思う。文字どおり、肩ひじ張らずに・・と。
逆転の発想でおなじみのロケット博士・糸川英夫さんは、1935年、東京帝国大学工学部航空学科を卒業。航空学科を選んだ理由がおもしろい。
東大工学部土木科卒の兄の一郎さんに、「東大でいちばん入試の難しいところはどこ?」と訊いたら、「そりゃあ、航空学科だよ。9人しか入れないし、毎年、各高等学校のナンバーワンがやってくる」との応え。そのことがきっかけで入学した。
糸川博士は、チェロ・ヴァイオリン・占星術など、様々なことに興味を持った。60歳の時は、貝谷バレエ團に入団した。
糸川博士曰く、東大に入ることで得たものとは、学問の内容そのもの以前に、東大に入るための勉強方法が習得できた、ということなのである。
チェロの演奏コンサートのためには、楽譜のフレーズをバラバラにして反復練習。それぞれに会得したバラバラのものを最後に一曲へとつなげる。
もちろん東大で学んだことは多かったであろうが、入試というプロセスで得たものが、その後の人生すべてに役立った、と晩年に述懐されていた。
今週のお題「テスト」