日日平安part2

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俳優・岸部一徳さんはなんて恰好いいのだ論

 

岸部一徳さんという役者は名脇役だと思う。役者としての転身は、1975年の連続ドラマ『悪魔のようなあいつ』に出演したのがきっかけだとか。

このドラマの主演は、沢田研二さんである。グループ・サウンズ(GS)のザ・タイガースで、ふたりは4年間一緒に活動してきた。当時の演技としては、映画主演などもこなしている沢田さんに比べ、岸部さんにはぎこちなさがあった。

まだ不慣れなのだから当然ではあるのだが。それにしても、岸部さんがなんで役者に? と、ふしぎでたまらなかった。私の頭の中では、岸部さんと役者がまったく結びつかなかったからである。

 

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その後、しばらくは気に留めることもなかったが、長年にわたって映画、TVドラマ、CMなどのあちらこちらで見かけることになり、岸部さんのお顔を拝見するたび、なんでこんなに売れているのかわからなかった。

しかし、じっくり観てみると、あの頃よりしたたかで、存在感がある演技をしているので納得した。それにしても、数えきれないほどの出演数である。

『相棒』では、小野田公顕 警察庁長官官房室長(通称・官房長)の役で、右京さん(水谷豊さん)と丁々発止のやりとりが楽しくてたまらなかった。役のうえでは殉職されてもう会えないが、平日夕方の再放送は必ず録画して、岸部さんの出るシーンを楽しみに観ている。ストーリーはわかっていても、そのシーンが観たくてたまらないからだ。

 

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『ドクターX』の医師紹介所神原・所長役も大好きである。本人もかつては、ドクターXと言われている医師の一人だった、というところが渋くていい。米倉涼子さんや西田敏行さん相手に、テンポのあるやりとりが可笑しくて楽しい。

同じ医療モノで(放映局ちがいの)『医龍』にも出演していて、こちらでは気味の悪さを醸し出すブラックユーモアで、物語を盛り上げている。映画出演も多いが、この数年ではとくに、印象が強すぎて忘れられないシーンがある。

十三人の刺客』という映画で、三州屋徳兵衛(落合宿庄屋)役の岸部さんと、野獣のような木賀小弥太(伊勢谷友介さん)の異様な絡みである。伊勢谷さんはあまりにも精力絶倫すぎて、岸部さんから何人ものお姉さんを紹介されるが、まったく鎮まらない。

そのとき、岸部さんがうっかり目を合わせてしまう。そして怪しい雰囲気の中、岸部さんの顔がスクリーンいっぱいの どアップに映し出される・・。一徳さんが伊勢谷さんに犯されたその瞬間(とき)なのだ。それを観て、いつまでも笑い転げてしまった。こんな演技までこなす役者さんって、他にいるのだろうか。

 

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GSが下火になった1970年11月、 ブームの中で最高の人気を誇ったザ・タイガースの解散が発表された。そして12月には、タイガースと人気を二分したザ・テンプターズの解散公演が東京・大手町の小ホールでひっそりと行われた。また、GSブームの火付け役だったザ・スパイダースも解散が決まった。

この3つのバンドメンバーで、PYGというバンドが新結成された。ジュリー(沢田研二さん)とショーケン(萩原健一さん)のツインボーカルというスーパーバンドである。岸部一徳(当時は修三)さんもベーシストとしてこのバンドに参加していた。

PYGは私もお気に入りのバンドであったが、ショーケンは俳優として、ジュリーはソロ歌手として売れ始め、ふたりが独立という形になっていった。 残ったメンバーは、沢田研二さんのバックバンドや、萩原健一さん出演作品のサントラを中心にと、活躍の場を変えていった。PYG自体の活動は1年程度であった。

 

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岸部さんの演技にはミュージシャンのエッセンスを感じる。逆に、数ヶ月前の(オリジナルメンバーによる)ザ・タイガースコンサートでは、ベースを演奏しながら歌う一徳さんの姿が、俳優なのにあんなにうまく演奏できてカッコいい、と見惚れてしまう。

やはりというべきか、いかりや長介さんを思い出してしまう。長介さんが、ザ・ドリフターズのリーダーで大活躍しているときは、とくにファンでもなかったのであるが、俳優としてシリアスなドラマに出られているのを観て、名バイプレヤーだと感じた。亡くなられたときは、あの演技がもう観られないのかと残念でならなかった。

いかりや長介さんも岸部一徳さんと同じベーシストであった。思えば、ベースという楽器そのものが名バイプレヤーなのかもしれない。ベースというすばらしい楽器をあんなに上手く弾きこなせるのだから、名演技の要素が自然に擦り込まれていても、ふしぎではないのであろう。

 

                                                                                                       参考:Wikipedia