ひがし・きょうと
かつて、アンノン族というのが大ブームになった。
その名の由来は、若い女性向きの雑誌『アンアン』と『ノンノ』で、これらのファッション雑誌やガイドブックを持った、多数の若い女性が特定の観光地に押しかけたのである。シンプルだけどファッショナブル。知的で大人びて見えたりもした。鉄道や旅行社から、女性客が旅行の主役として、重視されるきっかけにもなった。
私は、鎌倉と清里でアンノン族をよく見かけた。
とくに、平日の鎌倉がアンノン族の女の子たちで埋め尽くされていたことに、強烈な印象がある。そして、アンノン族は、もちろん京都にも多く出没したことだろう。
アンノン族の時代から時がだいぶ経過しているが、今でも女性客は旅行の主役であることに変わりはない。数年前に、地元の書店で書籍をのんびりと探していたときである。旅行のコーナーで、若い女性が3人でガイドブックと地図を探していた。どうやら、行き先は京都らしい。にぎやかにワイワイと、お気に入りのものをあれこれと物色していた。
その中のひとりが突然大声で、「ねえ、見て!見て!」とふたりに声をかけた。
「この本持ちやすくてよさそうよ」
「あらホント!」
そして、ワイワイがやがやと。
旅の楽しさは、こうしてガイドブックや地図を手に入れるところから始まるものなのだ。
また、3人のうちのひとりが「その本ってさ、『ひがしきょうと』のなんだね」と。その声で視線を向けた私。女の子の手の中にあるガイドブックには、たしかに『ひがしきょうと』とは書かれていた。
話のなりゆきを耳にしていた私も、一瞬そう読んでしまったのであるが、もちろんそこには漢字で書かれていた。『東京都』と・・・。
今週のお題「紅葉」