日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

不幸にする一番確実な方法は


<みんなで吸おう 明るい煙草>。昭和20年代中期の映画館には、こんなキャッチフレーズのポスターが貼ってあったらしい。

作家・井上ひさしさんが傑作青春小説『青葉繁れる』のあとがきに、その景観を書き留めていた。仙台市での高校時代には、映画館に足しげく通ったとのことだ。

当時、国の予算の2割が煙草と塩の利益金で賄われ、教育費や公共事業費などを支えていたという。孤児院で過ごした井上さんは教育費に反応し、「大人になったら喫煙する」と映画館で決心した。

暮らしが質素だった時代の思い出は懐かしい。作家・向田邦子さんは子供の頃に、宴席から酔って帰った父によく起こされたという。

手をつけない肴(さかな)や二の膳の折詰を開き、「さあ、お上がり」と父が促す。そして、夢とうつつの境で箸を動かす子どもを楽しげに眺める。私も寿司折を夜中に食べた記憶がある。思えば、家に冷蔵庫もなかった時代である。

 

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<記憶の中で「愛」を探すと、夜更けに叩き起されて、無理に食べさせられた折詰が目に浮かぶ>と向田さんはエッセイに記した。古き良き時代が頭に描かれ、家庭のにおいが行間に漂うようなお話である。

インターネットで葛飾北斎の『十軒店雛市(じっけんだなひないち)』を見ていたら、商家の軒下に小さな巣があった。日本橋近くのにぎわいを描いているが、とても親しみを感じる。巣をかけやすくするためか、落下防止用なのかわからぬが、巣の下に支えるような板が設置してある。

ツバメは天敵からひなを守るため、あえて人家に営巣するという。江戸の昔から、人々はその子育てを応援していたということのようである。

“幸福を招く”とされるツバメの巣へけなげに餌を運ぶ親鳥。そして、元気に育つひなの姿からは、とても尊いものが伝わる。そういうことが幸福のヒントなのだろうか。

 

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私が子どもの頃には、学校や官公庁などの土曜日は半休であった。その土曜日を「半ドン」と言っていた。語源はオランダ語の「zondag(日曜日)」である“ドンタク”だという。それが「半分休み」の「半ドンタク」から「半ドン」へとなった。

週休2日制の普及で、今は“解放感”の金曜日の夜と、“ゆったり気分”の土曜日ということになるのか。

ところが、日曜日となれば夕方どころか朝からもういけない。いわゆる「サザエさん症候群」が広がった。面倒な会議の場面を想像したり、イヤな上司の顔を思い出すことも。休みが長ければ長いほど、休み明けの不安も前倒しでやってくる。

その症状は子どももまったく同じで、3月からずっと休校という所も多い。解禁時にはどんな“憂鬱”が待っているのだろうか。

フランスの思想家ルソーは『エミール』にて、子どもを不幸にする一番確実な方法を説いている。<それはいつでもなんでも手に入れられるようにしてやることだ>と。物に限らず、わが子の笑顔ばかりみているようなら、幸福は子どもから遠ざかっていく。

厚顔無恥で見え透いた嘘ばかりの“どこぞの首相”は、いったいどういう育ちを受けてきたのか。父親はとても立派な政治家だったのに・・・。

 

 

お題「#おうち時間