日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

未来と過去のどちらがお好み

 

「適当」という言葉は文脈により意味が変わる。「今は過ごすのに適当な気温だ」と使えば、状態や性質が求める条件に合うことになる。かたや「適当に相づちをうつ人」となれば、軽々しいイメージである。

「さばを読む」は数をごまかすことに使われる。青黒く輝く魚体に由来する鯖は、数も多く鮮度が落ちやすい。そのため、市場で素早く数えあげて売ったのが語源だという。

食べ物を流し込むように口へ入れることを「かっこむ」という。アニメ『千と千尋の神隠し』(宮崎駿監督)で、不思議の国に迷い込んだ主人公のお父さんが、料理をかっこむ場面がある。

若いアニメーターはその動きが描けなかったという。なぜなら、「かっこむ」の意味がわからず、意味を聞いても経験がないため描けない。

 

 

私の体験で、靴ひものほどけた小学生に“ゆわく”ように伝えると、キョトンとして通じない。「結ぶ」と言い直してわかってもらえた。

子どもたちはタイムマシンで自分の将来を見たがり、大人は過去へと戻りたがるらしい。<時間を自由に行き来できるタイムマシンを一回だけ使えるとしたら>というアンケートの結果だという。

ある程度の歳になれば、時間旅行をするまでもなく自分の将来が予想でき、見たくもないという人もいるだろう。そんな未来よりも過去の自分や、亡くなってしまった親や友人に会いたい。“あの時”に戻り、過去の失敗をやり直したい、というケースもあるだろう。

<ノスタルジーとは、過去のいいとこ取り。苦しいこと、悲しいことは忘れ、良いことだけを思い出し、昔は良かったとなる>。過去の魅力について、脚本家・山田太一さんが書いていた。

 

 

広告コピー<トリスを飲んでハワイへ行こう>は、寿屋(現サントリー)の宣伝部にいた作家・山口瞳さんの作だという。1961年(昭和36年)、同社はハワイ旅行の懸賞を募集した。1等の賞品は「8日間で5つの島を巡る旅」である。

しかし、海外渡航はまだ自由化されていないため、とりあえず当選者に約40万円分の「ハワイ旅行積立預金証書」を贈呈した。その3年後に渡航が自由化された。

当選した64人の中で実際にハワイへ旅立ったのは4人のみだったという。残る人たちは現金で受け取ることを選択。

高度成長のスタートは切られたが、だれもが衣食住の“生活”を築くことに追われ、夢の海外旅行にまでは手が出せなかった。

約10年前には、昭和30年代の暮らしぶりを懐かしむ映画や催しが人気を集めた。当然、海外旅行も身近な日常の一部である。まさに<昔の夢が生活になり、昔の生活は夢になってきた>のだ。

なぜか、人生の中にはタイムマシンの要素が組み込まれているような気がする。