日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

似ていても違う生存の仕組み

 

座禅は知っていたが、こちらは初耳であった。俳人金子兜太(とうた)さんは80歳を過ぎてから立禅(りつぜん)を日課にするようになったという。亡くなった肉親の名、友人知己や恩師、先輩を次々に心の中で唱えるのだという。

それぞれの思い出も頭の中を断片的によぎっていく。そして、自分の中ではみんな生きているように思えるのだという。その数は120~130人だという。

この立禅を30分近く行うと、その日の暮らしがすっきりと豊かな気分になったそうな。そして、“死んでも命は別のところで生きている”と実感する毎日だった。

ドラマやバラエティでも親しまれた俳優の大杉漣さん。昨年、突然に亡くなったこの方も、命はきっと別のところで生きているように感じる。大杉さんは舞台を中心に活躍する中、オーディションで見いだされて出演した1993年の映画『ソナチネ』(北野武監督)の暴力団幹部役で注目された。

 

 

<はじめてオーディションみたいの受けたとき、オーディション行ったのはいいんですけど、会場に入ってスタッフの方がいらしてボクのことをチラッと2秒ぐらいしか見ないんですよね>。大杉さんが、当時のオーディションについての感想だ。

<2秒見て、はいお帰りくださいってスタッフの方がおっしゃるんですよ。何が起きたのかっていう感じでした>。

ドアを開けてすぐ閉めたって感じですから。たけしさん、確実にそこにいらしたから、間違いはなかったと思うんですけど・・・と。その2日後にお電話いただいて、あんたでいくよって、お電話いただいたんですけどね。なぜボクなのか未だに分かりません、との思いであった。

日活が若さあふれる青春ものに無国籍アクション。東宝では、駅前シリーズや社長シリーズ。松竹がしみじみと胸に迫るホームドラマ。その昔の日本映画には、会社ごとに具体的なカラーがあった。

 

 

俳優、監督そしてスタッフも専属だから、お家芸に磨きをかけられた。そのシネマ全盛期を支えた体系にも弊害があった。各社でスターの引き抜きを防ぐ協定を結び、守らぬ俳優はどの会社にも使われなくなった。

その問題に切り込もうとしたのが公正取引委員会であったが、ほどなく先導役の大映が倒産して協定が自然消滅した。人を縛りつけているうちに、産業自体が傾いたようである。

映画製作に様変わりはあっても、今も映画産業は存続している。妙な喩え話になるが、細菌とウイルスでは増殖の仕方の違いがあるという。似たようなものでも、生存の仕組みはかなり違うのだ。

菌は周りにエサがあれば、自分の遺伝子(DNA)を複製しながら増えていくという。対してウイルスにはその能力がない。人間など他の生物の細胞に入り込み、その複製機能を借りて自らを増殖させる。

昔と今では、映画製作費捻出等の違いが、よく似ているような気がしてくる。

 

 

今週のお題「雪」