選ばれても出られない映画祭
<ゆとりでしょ? そう言うあなたは バブルでしょ?>(なおまる御前さん)。第一生命恒例の「サラリーマン川柳コンクール」にて、昨年1位に輝いた作品である。
今年で31回目となるこのコンテストで大賞を獲得したのは、<スポーツジム 車で行って チャリをこぐ>(あたまで健康追求男さん)。
サラリーマン川柳は始まったときからの大ファンである。選ばれる方はもちろんのこと、選ぶ方もユーモアとセンスに溢れているようだ。
海の向こうでは、是枝裕和監督の『万引き家族』が、カンヌ国際映画祭のコンペティション部門でパルムドールを受賞した。衣笠貞之助さん、黒澤明さん、今村昌平さんに次いで4人目となる日本人の最高賞受賞である。
是枝監督がコンペ部門に出品したのは5回目であり、『誰も知らない』で柳楽優弥さんが男優賞、2013年『そして父になる』では審査員賞を獲得している
昨年のカンヌ映画祭では珍事があった。動画配信サービス「ネットフリックス(Netflix)」製作のオリジナル映画2本がコンペに選出されたのだ。
開催前から物議を醸した。フランスでは劇場公開されず、配信のみとなるためだ。映画祭側は、ネットフリックス側と交渉したが事態は変わらなかった。
そして、本年以降は<コンペ作品がフランスの映画館で上映されなければならない>という新ルールが適用され、コンペティション部門への参加が認められないことになったのだ。
ネットフリックス作品であるポン・ジュノ監督と、ノア・バームバック監督の作品自体の評判はいずれも上々だった。
それでも、「私は、大きなスクリーンで見ることができない映画が、パルムドールはじめ、賞を受けることなど考えられない」と(昨年の)記者会見上で、審査委員長のペドロ・アルモドバル監督が発言した。
今年はネットフリックスが、新ルールに「参加する意味がない」との理由で、カンヌ国際映画祭に参加しないことを決めた。
もし、ネットフリックスがオリジナル作品を劇場公開するにしても、フランスで劇場公開された作品は公開から3年経たなければ、ストリーミング配信をできないという独自のルールがあるのだ。
そうなると、ネットフリックス上でそれらの作品を3年間も配信できなくなる。新しいオリジナル作品を“今すぐに"観られるのが売りのネットフリックスにとって、大きな制約になってしまう。
「私たちの作品をほかのフィルムメーカーと同じように公平に扱ってほしい」とネットフリックスのサランドス氏は主張した。
「コンペティション部門に出品できないのなら、(他部門で)カンヌ国際映画祭に参加する意味はない」とのことで“撤退"に至った。
わざわざ劇場へ足を運ばなくてもいいよね、という映画もあれば、ぜひ劇場で公開してほしいとのテレビドラマもある。そこへ、配信のドラマや映画が絡んで三つ巴になってくる。どのような形でも、上質な作品は後世へと繋いでほしいものである。