大風呂敷を広げて見えるモノ
蚊のなかにも知恵の回るのがいる。新聞のコラム記事にあった。能の囃子方の取材から得た情報らしい。その知恵とは、鼓を持つ手ではなく、打つほうの手にとまる。それなら叩かれる心配がないからだ。
ドイツの思想家・ゲオルク・リヒテンベルクは著書『雑記帳』で蠅の知恵に触れた。ハエは叩かれたくなければハエ叩きの上にとまるのが安全である・・と。
『ハエ男』は1993年6月に森高千里さんが発表した19枚目のシングルである。森高さんが作詞・作曲を手がけた初のシングルで、ドラムと左チャンネルのピアノも演奏している。
森高さんは、それ以前からご自身の曲の作詞をしている。『臭いものにはフタをしろ!!』では、何度もローリングストーンズを自慢する中年男を、女の子目線でコケ下ろす。「それって、オレのこと?」なんて言いながら、ノリノリで聴いていた。
ひとつのことを頑固に続け、なにかにこだわっている人の吸引力は魅力がある。『私がオバさんになっても』を森高さんは、今もテレビで歌っている。まったくオバさんに見えないと、いつも感心している。
<金持ちとは金を持った貧乏人>。昔の映画『恋をしましょう』にて、マリリン・モンローとイヴ・モンタンの会話からの言葉だったか。常識の枠から抜け出るような、記憶に残る“名文句”である。
人は、大多数の人がやらなければと、考えていることをやっている。常識に従っているのだ。常識から抜け出てみると、新しい自分を発見できるかもしれない。
「独断と偏見」はいい言葉にとられない。でも、人とちがう意見があってもいいはず。人はそれぞれいろいろな考え方がある。自分はこう思うからと相手を否定することも必要ない。
大いなる独断と偏見を持つ。そしてそこに説得力を持たせれば、立派なアウトプットになる。小説やドラマ、映画の創作なら、魅力あるテーマに化けることもあるのだ。
時に大風呂敷を広げてもいいはず。実力本位の社会では謙譲が必ずしも美徳にはならない。話の中身はコミュニケーションのわずか7%のウエイトしかないとの調査結果もある。
相手にインパクトを与え、話をしようと思ったら、話の内容よりも外見的な自分のスタイルにこだわると、やりやすくなることもある。
ハッタリを広げて、実行できなければ評価は落ち、カッコも悪い。それでも、その過程でついた力が人を大きくするはず。打たれ強さを持つ人はやはり得だ。力がついたら力が抜けて、自分のペースで走れる。
<言うものは知らず、知るものは言わず>。物事をよく知り抜いている人はみだりに言わないが、よく知らぬ者ほど軽々しくしゃべる。
<なぜか嫌いな人ほど、意外な長所が見つかる>とは、映画評論家・淀川長治さんの言葉だったと思う。
どんなつまらない映画でも、一ヶ所はいいところや教えられることがある。いいところを探すクセが大切で、ひとつでも本当にいいと思ったところをほめる。
今週のお題「あの人へラブレター」