日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

この星の壮大な時間旅行とは

 

“ダントツ”との言葉を世に広めたのは石原慎太郎さんとの説がある。月刊『文芸春秋』(1963年1月号)のヨットレース体験記に、「スタートからダントツ(断然トップ)で出た」と書いた記事を寄せた。

ダントツマークの美酒には“おごり”という毒も含まれていそうだ。支持率19%だった野田内閣から、政権交代を果たして間もない安倍内閣は、60%台の支持率を保ち2013年4月には68%に達した。2018年4月は38%になっている。

成人の腸は“善玉菌”が20%、“悪玉菌”が10%。そして、その他の70%が“日和見(ひよりみ)菌”と呼ばれ、善玉や悪玉にコロコロ寝返るタイプだ。これを支持率などの推移に当てはめてみるとおもしろい。

<地球は、46億年という壮大な時間旅行をしている>。生物地球化学者・大河内直彦さんのコラムにあった。それに比べ、“おごり”の美酒はちっぽけなものである。

 

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星屑が集まりこの星が育っていく。劇的な生物進化の痕跡や現代文明を影で支える石油の根源岩がある。そして、地震活動の爪痕に至るまで、この星がたゆむことなく重ねてきた時間が流れている。

今は、グーグルアースで一瞬にして世界各地へ旅することもできる。とはいえ、そこにあるのは情報の山でしかない。46億年の壮大な時間の流れの中で、たまたま生み落とされたのが私たち。自分たちに深く刻まれた時間の根源を求めて旅をするのも悪くない。

宇宙飛行士・向井千秋さんが、スペースシャトルの機内で詠んだ短歌があるという。<宙返り何度もできる無重力>と上の句を詠み、下の句は地上に募ったそうだ。<涙は頬を伝わりますか>、<しだれ桜はどう咲くのやら>などの名作が寄せられた。

米国の「アポロ11号」で人類が初めて月面に立ったのは半世紀弱前の1969年。日本人が宇宙のかなたで短歌を詠む日が来ることを夢にも思わなかった。

 

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2065年、日本の人口が8808万人に減少し、高齢者が約4割を占めるらしい。その風景は想像できないが、地球は今と同じに壮大な時間の流れの中にいる。

永井荷風さんは61歳のとき、遺言状を日記に記した。<一、墓石建立致スマジキ事>、<一、住宅ハ取壊スベシ>。遺産や蔵書類はどこにも寄付するな、と。

家族もなく文壇の交わりも廃し、孤高のまま世を去った作家は、後世の人々から慕われるのが真っ平御免と考えていたようだ。没後に、その人の生き方に共感をおぼえる人が増えている。死後のことは死んでみないと分からないものである。

折り紙付きの個人主義は、「日本の風土や芸術を愛しながら、国家や国民にあれほど冷淡で薄情だった文学者もめずらしい」とのこと。親交のあった仏文学者・河盛好蔵さんの弁である。

“冷淡で薄情”なまなざしをもって眺めた人々の末裔たちから、心ならずも慕われる。人の世は死んでからもままならないもの。ただ、“おごり”という毒がない人なのだろう。