日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

食事の場面でわかる名優の味

 

断崖絶壁で追い込まれ、犯行を自供する犯人。前場面はアリバイ崩しだ。怪しいと思える人物は殺される。2時間サスペンス(ドラマ)の鉄板である。それも今、崖っぷちに立たされ消えゆく番組が多い。

通称“土ワイ"の『土曜ワイド劇場』(テレビ朝日系)は昨年4月で放送終了。丸40年にわたる放送に幕が下ろされた。同じくブームをけん引してきた“火サス"こと『火曜サスペンス劇場』(日本テレビ系)は、2005年に終えた。

他局も2時間ドラマ枠を減らして、続々とエンタメ枠に代わり、バラエティー番組に様変わりをしている。

2時間ドラマは多くのロケが必要で制作期間が長い。出演者のギャラも高いためコスパが悪い。それで、最近の視聴率は10%を超えるのがやっとだという。

 

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サスペンスドラマが流行する前は、ホームドラマが主流であった。ホームドラマには、食事の場面がつきものであろう。家族が食卓を囲み、丁々発止のやり取りをするのだ。

<慣れない人たちは、自分の台詞の番だな、と思う頃になると、ご飯を食べないの。口に入れない>(文春文庫『向田邦子全対談』より)。向田さんいわく、「食べているふりをする」のだという。

<台詞は明確に聞こえるんですけど、嘘なんですね>とも。嘘に走る気持ちを思えば、セリフが聞き取れなくては困るだろうし、口からご飯粒でも飛び出したら、視聴者に不快な思いをさせかねない。

ところが、森光子さんはお見事だったそうだ。自分がしゃべる番になっても、口いっぱい頬張ったという。それでいて“せりふの言いぶり"は確かで、見た目も優雅だったというから、やはり名女優なのである。

 

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積ん読"は外国語に訳しにくい単語だという。「本を積み重ねて読んでいない後ろめたさ」と、「いつかは読みたいとの気持ち」を込めて訳すのは、難題であるらしい。一年前の「天声人語」に記されていた。今と同じに、森友学園問題で揺れ動いていた時期だ。

“忖度<そんたく>"とくればいかがなものか。「他人の気持をおしはかること」の意味らしいが、こちらも外国語には訳しにくそうだ。日常であまり使わない言葉が脚光を浴びても、ぼんやりとして実態がわかりづらい。

学園が格安で国有地を入手できたのは、名誉校長だった首相夫人や首相官邸の意向を役人たちが忖度したためでは、との疑い。さらに、財務省国土交通省大阪府にも二重三重の忖度のにおいが・・・。そのような流れなのだろうか。

3月28日の参院予算委員会で、安倍昭恵夫人をめぐる答弁の際、共産党・小池書記局長から「名誉校長」について「いったいどこの学校や保育園なのか」と質された首相は、“しどろもどろにうろたえて"見られたものではなかった。麻生財務相の事実誤認によるマスコミ批判も同様にひどいものだ。

食べたふりでハッキリものがいえない嘘の演技にしか見えない。森光子さんの“名優ぶり"をしっかり学び、確かな口跡を身に付けていただきたいものである。