日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

今日の夕日は明日の昔なりき

 

<昨日は今日の古(いにし)へ 今日は明日の昔>。
室町時代の歌謡集『閑吟集』の一編だという。

時の歩みは速い。今日から見ると、昨日は遠い過去になり、明日から見れば、今日は遥かな昔・・・なのだと。

日が沈むと、その日の終りを肌で感じる。

「映画ではシリーズすべてに“夕焼け空”の場面を入れました」。
山田洋次監督は映画『男はつらいよ』の話で、そう語ったという。

<奮闘努力の甲斐も無く 今日も涙の 今日も涙の日が落ちる・・・♪>。
星野哲郎さん作詞の主題歌にも夕日が歌われた。

“寅さん映画”が全盛の頃、邦画の新作を封切といい、2本立て上映だった。洋画はロードショーといって1本のみの上映だった。

日本で2本立て興行を本格的に始めたのは東映だとか。
1本分の料金で2本の映画を見せる映画館はその前にもあったが、他社どうしの作品で2本立てになると、映画館の興行収入から発生する配給会社の収入が半分の額になる。

 

1899

 

東映が自社製作の新作2本立て興行を、全国の直営館や系列館で実施したのは1954年の正月映画からだという。

“2本立てによるお得感と組み合わせの巧み”は多くの観客の支持を得て、“東映時代劇ブーム”を巻き起こすきっかけにもなったはずだ。

アメリカで大ヒットしたスピルバーグ監督の『レイダース 失われたアーク』。
日本での公開は1982年正月であり、作品の面白さから大ヒット間違いなしといわれた。

ところが、同時期に公開された『キャノンボール』と『エンドレス・ラブ』の2本立てが全国で大ヒットした。結局、『レイダース』はこの2本立ての半分以下の興行収入しかあげられなかったとのこと。

新作の2本立て興行も今では行われていないようだ。
2000年代になり減り始めたのは、シネコンの拡充でスクリーン数に余裕が出来たからだ、との説もある。

 

1900

 

複合映画館とも呼ばれるシネコンは、2000年代に入り従来のロードショー館を置き換える形で繁華街に作られることも多くなってきた。

一箇所でいくつもの新作映画が観られる便利さで、落ち込んでいた映画観客を増やしはしたが、最近ではどのシネコンを見ても上映作品は同じで、編成のオリジナリティーが感じられない。

反面、名画座が旧作を2本立てで上映し、絶妙なカップリングで観客を集めているらしい。かつて、場末の映画館で観た3本立てや4本立てのワクワク感が想い浮かぶ。

そういえば、『男はつらいよ』の初期のカップリングはドリフターズの映画作品だったようだが、シリーズ最後の方は『釣りバカ日誌』との豪華組み合わせだった記憶がある。

この季節、帰省した故郷で再会した幼なじみと地元の映画館で名画を観たり、夕日を仰ぎみることもあるだろう。「おい、相変わらず馬鹿か」。寅さん流の、気の置けない言い合いも懐かしく楽しめそうだ。