日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

旅の楽しげな土産話に人柄が


優れた経営者には共通点があるのだという。
元官僚で工業経済学者・政策研究大学院大学名誉教授である橋本久義さんによる理論がおもしろい。

1. 人徳があること。町工場なので経営者が悪いと、従業員が辞めてしまう。
      暴走族出身者を教育し、一人前の工員に育て上げるぐらいは当然なのだ、と。
2. 謙虚さがあること。そうでなければ、社員の能力をきちんと評価できない。
     そして、埋もれている能力を見つける嗅覚を発達させていく。
3. 社外の人を徹底的に大切にすること。
      発注先の技術者や地域の学者が無給で協力してくれる。
      つまり、「あの人のためならば、とひと肌脱がせてしまう」ことなのだ。

優れた経営者の人柄が浮かんできてわかりやすい。

“カンパニー”の語源は“コンパーニャ”。中世イタリア語で、コンは「共にする」、パーニャは「パン」。同じ釜の飯を食うものという意味になる。

 

1837


国文学者・池田弥三郎さんが、奥様と一緒に東北の旅館に泊まった際の話である。

「じいさん、ばあさん、お出かけ」。散歩に出るとき、番頭さんが大声で言った。
今度は、戻ると「じいさん、ばあさん、お帰り」と。

一度だけならず二度は勘弁ならぬ、と池田さん。
「キミ、僕たちは確かに若くはないが、もっとほかに言い方があるんじゃないか!」

問いただしたところ、“じいさん、ばあさん”は、宿泊の部屋番号「十三番さん」であったのだ。

お国訛りは魔法の言葉なのか、ほんのひと言でその土地に生まれ育った人を懐かしい過去に呼び戻す。そして、ゆきずりの旅人には土産話を残してくれるようだ。

 

1838

 

8歳のころに失明した箏曲家・宮城道雄さんは、光を断たれて、指先の感覚が研ぎ澄まされたのだろう。布地の色は分からなくとも、縞の粗い細かいは見当がついたという。

晩年に至るまで旺盛な好奇心のおもむくまま、触れて、撫でてみることを喜びとしたようだ。

欧州旅行から帰国後、親しい作家の内田百閒さんと対談をした。
「パリのノートルダムは撫でてみましたか」と百閒さん。
「脚のほうを撫でてみました」と笑顔の宮城さん。

「どうです、手ざわりは」
「じつは(英国)女王を撫でてきたかったんです」
「それはだめ」

とても楽しい旅の土産話である。
お二人のこの会話だけで、小さな物事にこだわらない人柄がしのばれる。

さて、今はGWの真っ最中である。旅の途上で土産話を作成中の方も多かろう。
残念ながら私は留守番の組なので、皆様が戻られての楽しい土産話(記事)が、今から待ち遠しい。