日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

「見る」のではなく「観る」こと

 

2005年の世界陸上ヘルシンキ大会・四百メートル障害で、銅メダルを獲得した為末大さん。その速さの秘密は、世界最高と言われるハードルを跳ぶ技術であり、「サムライハードラー」と呼ばれるようになった。

為末さんはコーチにはつかず、一人で工夫を重ねながら世界のトップクラス入りを果たした。その強さの秘密は意外なところにあった。

<日本古来の動きや考えをトレーニングに取り入れた時から、よくなってきた>と為末さん。そのヒントは、(兵法の極意を説いた)宮本武蔵の『五輪書』にあったといい、その一例として<「見る」のではなく「観る」こと>の重要さを挙げた。

 

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「見る」とは直視することであり、そうすると肩に力が入ってしまう。ハードルが通り過ぎる景色のように感じ始めると、リラックスして跳べるのだという。

五輪書』には、大きく広く目を配る「観」の目が大事なのだとある。
<離れたところの動きをはっきりとつかみ、また身近な動きにとらわれず、それをはなして見ること>なのだ。

求道者のような深みのある言葉であり、人生万般に通じる指摘でもある。

マラソンでいくつものレースを走破している友人がいる。同じ距離を走るのだが、その景色のちがいで大好きなレースとそうでないレースがあるという。

昨年は大好きなレースで体調を害したが、なんとか完走を果たした。からだはきつくてつらい展開になったにも関わらず、ゴールが近づくにつれ、「もう終わってしまうのか」と寂しさがこみあげた。

からだは音を上げているはずなのに、もっともっと走り続けたくてたまらなかったそうだ。

 

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景色を感じとる視覚では、色の関連も影響がありそうだ。

イヌやネコなど多くの哺乳類が色を感じとる場合、青と赤を中心に認識する“2色型”の視覚だという。鳥や爬虫類など(哺乳類以外の)脊椎動物は、4種類を感じる“4色型”が多いらしい。

ヒトは3種類のオプシンの組み合わせで色を認識する“3色型”で、脊椎動物の中では珍しいタイプのようだ。

「光の三原色」といえば、赤、緑、青の3色のこと。
ヒトは赤と緑を同時に見ると“黄”に感じるなど、3色の組み合わせで色を認識する。
3色すべてが均一に混ざると“白”になる。

絵の具やプリンターなどで様々な色を表現するときは、シアン(明るい青)、マゼンタ(赤紫)、黄という「色の三原色」が基本となる。フィルム写真の時代も、この組合せで色を再現していた。

もともと脊椎動物は4色型で、哺乳類は進化の過程で2色型に変わった。初期の哺乳類は夜行性で、色覚があまり重要ではなかった。

ヒトやチンパンジー、ゴリラなどの霊長類は3色型に変化した。霊長類は昼間、森の中で活動するように進化し、木漏れ日などで色合いが変化しやすい環境だった。
そして物を色で見分けるという利点で、3色型になったとのこと。

どうやら、感じとる視覚の進化は、景色による影響がとても大きいようだ。