日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

「見ぬもの清し」と「ごり押し」

 

母は、床に落ちた豆を素早く拾い、「見ぬもの清しだからね」と言った。
それが後に、“3秒ルール”という名で知ることになった処世の知恵だった・・・と。
エッセイスト・玉村豊男さんのコラムにあった。

落ちても見たことにしなければ、誰も清潔を疑わない。とても説得力のある言葉だ。

過剰な潔癖さの若者もいるらしい。昔ながらの清潔感に鍛えられた身にとって、無菌抗菌志向には、いささか違和感を覚えないでもない。

今の日本は、世界でいちばん清潔な社会かもしれない。そのため外国に行くのは嫌だという若者が増えている、とも記されていた。

 

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「見ぬもの清し」を「知らぬが仏」や「見ぬうちが花」などの意味合いで使う人もいるらしいが、玉村さんにとってその言葉は母親に教わった「3秒ルール」なのだという。

昔は、父親に代わり小言をいうのは、おじ(伯父・叔父)の役目だったらしい。
<叔父や叔母もいない社会というものは人類の歴史に類例がない>。

一人っ子政策」の中国を、世界中の心理学者や社会学者が貴重な研究対象にしようとしていたとか。ほぼ半世紀後の未来を描く、アーサー・クラークのSF小説『2061年宇宙の旅』の題材にも共通するという。

中国政府が1979年から続けてきた一人っ子政策を廃止ということで、どうやらそれも、作家の想定したようには、ならなくてすむようだ。

 

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昨年、政府と経済界と「官民対話」の議論を受けた安倍首相は、「世界に先駆けた第4次産業革命を実現します。スピード勝負です」と言った。

それは、石炭と蒸気機関の第1次、石油や電気の第2次、情報技術による第3次に続く大変化らしい。

人工知能ビッグデータを活用し、東京五輪ではドライバーのいらない無人自動走行のタクシーを“日常の足”として使えるようにしたい。

数年内には、小型無人飛行機ドローンを使った宅配も実現する、とか。
数年後の構想がイメージ図とともに描かれているらしい。

“女性が輝く”に続き、「1億総活躍」。耳に心地よくても抽象的な言葉を連ねるのがお得意のようだが、“絵に描いた餅”にならぬことを願う。

かつて、京都や石川に“鮴(ごり)押し”という漁法があったそうだ。
2人でむしろを持ち、川底の石をこするように小魚を浅瀬へと追い込む。

汗をかいたぶんだけ、帰りの魚籠は重くなったはず。
額に汗しない強引な未来図には、“無菌抗菌志向”と共通するなにかを感じてならない。

そこからは、“3秒ルール”の「見ぬもの清し」のような、具体的な潔さがまったく見いだせないからだ。