難しいことはわかりやすく
何年ぶりであろうか。“数独”にすごく凝っている。
脳トレに最適なような気がするからだ。
数独とは、「数字は独身に限る」の略だという。
パズルの一種で、9列9段のマス目を3列3段のブロックに分け、各列・各段・各ブロックに1から9までの数字を重複しないように入れるもの。ナンプレとも呼ばれている。
数学とはちがい、単純明快でわかりやすい。
数学者・森毅さんは随筆に書いている。
<数学が難しいというのは、数学をわからせることのできない中学教師が、「難しいからわからない」と理屈をつけるために言っている>と。
消費増税騒ぎの際、軽減税率は難しいと言われたが、麻生財務相いわく「面倒くさい」。この方の人間性はとてもわかりやすい。
知名度の低さを逆手にとりPRに励んだ島根県には、<島根は鳥取の左側です>とのキャッチコピーがあった。カレンダーにも<ひとが集まるのがシネマです。ひとが集まらないのがシマネです>などの自虐ネタ。他県の人に鳥取と間違われるため、<もういっそ砂丘を作ろうと思う>というのもある。
司馬遼太郎さんは中学1年の英語の授業中、「New York」という地名の意味を先生に質問したという。すると、「地名に意味があるか!」と怒鳴られた。
帰り道、市立図書館で司書の人に必要な本を出してもらって読むと、英国軍の占領に伴い、英ヨーク公の名が由来だった、とわかった。司馬さんの“図書館好き”はこの時から始まったそうだ。
台風の影響にともない、異常な雨の多い昨今である。その雨の原理もわかりにくい。
ある専門家の話では、海から蒸発した水蒸気が雨となって降る自然界は巨大な蒸留装置でもある。地球の温暖化で海面からの蒸発量、つまり雨の材料が増えたことで蒸留装置に変調をきたしたと見られるらしい。
地球の温暖化は18世紀の半ばから始まり、明治の末期、20世紀の初めは大気中の二酸化炭素濃度が急カーブで上昇しはじめた時期にあたるという。
SF作家・星新一さんの父親で実業家の一さんは野口英世博士の紹介で、大正時代に米国で発明王のエジソンに会っている。エジソンは、一さんらに、<利益よりも、私は人類のために新しい富、新しい道具、新しい産業を創造しようとして働いている>と熱く語ったという。
創造や創作には、ネタを枯らさずに保ち続ける努力も大切なことであろう。
“ネタ”という言葉を辞書では、「種(たね)」の倒語としている。
読みは逆さまだが、「もとになるもの」、「材料」といった意味はそのままで、「話のネタ」などと使う。
作家・林望さんの『帰宅の時代』では、家庭の会話を畑の植物に見立て、その畑を日頃から耕しておくことを「会社一辺倒」でやってきた人々に勧めた。
<日ごとの手入れを怠って草ボウボウにしておいた荒れ畑には、会話の花など咲きはしない>と。
毎日、手入れを怠っているわが身には、とてもわかりやすく身に染みてくる。