日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

凡人は真似するが偉人は盗む

 

親族を装う振り込ませ詐欺の被害は、7割が首都圏(1都3県)に集中しているという。付け焼き刃の方言でボロは出したくない、というのが犯人の心理らしい。

方言には効用があるようだ。
地元の人同士のつながりを強めることで、人の心を故郷につなぎ留める役割になる。

また、外から来た人にとって土地に溶け込むパスポートになることだ。方言を口にしたときに、よそ者はよそ者でなくなるらしい。

地元民以外からは、方言の微妙な間や抑揚が真似しにくいため、盗むまでには至らない、ということなのか。

 

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10年前、“送金指示メール問題”という事件が国会を騒がせた。
民主党衆院議員であったNが、ライブドア事件にまつわる質問から端を発した政治騒動である。

証拠とされたメールが捏造であることが判明して、Nは議員辞職し、民主党執行部は総退陣に追い込まれたのだ。偽造メールで“信用”をお釈迦にした民主党、との記事が多く報道された。

物を作り損ねた時、<お釈迦になった>という。細工職人が火を強くしすぎて溶接に失敗し、発した言葉に由来するらしい。

メールのしくみが少しわかる人なら、偽物だとすぐわかるメールであったが、党内の者たちはその検証すらできなかったようだ。

本物か否か、万全の自信がないのなら、あれほどの強気で攻めずとも方法はあったはず。自民党を焼くはずの偽造メールの炎で、己の“信用”をまさにお釈迦にした。

 

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“真似や盗む”といえば、著作権にからむ話も多い。
人間の置き忘れたカメラで、動物園のサルが自撮りした場合、著作権は誰にあるのだろう。アメリカの裁判所が下した結果では、“サルに著作権はない”ものだった。
どういう視点からも、著作権の問題が発生するところがおもしろい。

知的財産権”の判断も、複雑でむずかしいもののようである。
厳しい権利保護など必要ない。緩いくらいのほうが結局、万人の利益となるのだ。
そういう意見もあるようだが、真似られる側からみればそうも言っていられない

アメリカの映画業界は、1980年頃に現れたビデオデッキに驚いた。
作品がすべてコピーされるとの解釈で、著作権法違反を裁判所に訴えた。
僅差で訴えは退けられたが、関連商品で市場は広がり業界は「ドル箱」を得ることになる。

<優れた芸術家は模倣し、偉大な芸術家は盗む>という。
天才ピカソの言葉である。凡人は猿まねしかできないが、偉人は本質を見抜き自分のものにする、という意味らしい。

 

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アップルの創業者スティーブ・ジョブズさんは、既存の“良いもの”を利用するのがうまかった。90年代の大発明といわれる<“マウス”でアイコンをクリック>も、元は他社が不要と放り出したアイデアだったという。

マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツさんにしても、(Windowsの基になるOSである)DOSは他社から安く買い取り、IBMのパソコンへ搭載して莫大な利益を得ている。

日本企業を見てみると、“良いもの”を海外に提供しているケースが目立つような気がする。最近まで、液晶パネルで最先端を走っていたシャープも、身売りで切り刻まれ、液晶部門は売られてゆく。

定年退職した日本の技術者が、独自技術を海外に流したりして、海外勢の追い上げが厳しい。あのアップルでさえ、既存商品の改良版ばかりで物足りない昨今である。革新的な商品を求める市場の評価は厳しい。

独自の新技術を次から次へと生むのはたやすい事ではない。
そうなれば、既存の技術を下敷きにした、革新的なものを生み出すための<上手な“盗み手”>も必要になってくるはずだ。そのためのルール作りも当然必要になってくるだろう。