日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

アプレ新人類オタクへの中継

 

アプレゲールとは、第一次世界大戦後のフランスにて、既成の道徳や規範に囚われない文学・芸術運動が勃興したことをさした。

第二次世界大戦後、日本ではその省略形で“アプレ”という言葉が流行した。
戦前の価値観と権威が完全に崩壊し、既存の道徳観を欠いた無軌道な若者による犯罪が頻発。彼らの起こした犯罪は「アプレゲール犯罪」と呼ばれ、徒党を組み愚連隊を作り、治安を悪化させた。

暗黒面も含め、戦後で自由奔放に生きる若者たちが“アプレ”と呼ばれるようになった。一方で、彼らの様な思想の持ち主に対し、古くからの価値観を守ろうと主張する勢力をアヴァンゲールと呼んだ。

私が“アプレ”で連想するのは太陽族である。
一橋大学在学中の石原慎太郎さんが『太陽の季節』で芥川賞を受賞。その作品は弟の裕次郎さんをモデルに書かれたといわれた。裕次郎さんも映画化された作品へ出演し、その後数々の主演作で大ヒットを連発。瞬く間に大スターへと駆け上った。

 

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1980年代、豊かさの中で育ち、新たな価値観を持つ世代が社会人となり、新人類と呼ばれた。1986(昭和61)年の「新語・流行語大賞」で“新人類”は、“おニャン子”、“プッツン”、“亭主元気で留守がいい”をしのぎ、流行語(金賞)に選ばれた。

おおむね、1955~60(昭和30~35)年以降に生まれた(当時の)若者が新人類といわれ、<残業は断り、週休2日は断固守ろうとする>、<責任ある仕事を避けたがる>、<議論や対立を嫌う>などの傾向があるらしい。

新人類世代について、全国世論調査では、「人種が違うと思うほどに違和感を感じる」と答えた人が、30歳以上で21%、60歳代では3割近くいたという。
旧人類”の戸惑いなのであろうか。

<戦争も学生運動もなく、何かに胸を熱くしたり、それで深く傷ついたりしたことがない世代。いつも手探りで臆病で、そのくせイイカッコシイでもある。同じブランドの服を着て安心する反面、着こなしの違いを強調する。僕自身そんな世代の一番上にいる>。
当時まだ20代の秋元康さん(1958年生まれ)は、こう分析していた。

 

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コラムニストの泉麻人さん(56年生まれ)いわく、<前の世代は戦後の貧乏時代をまがりなりにも体験している。しかし、日本が豊かになり生まれ育った新人類は、消費活動を楽しむ世代として現れた>のであると。

前の世代とは、1947~49(昭和22~24)年生まれの“団塊の世代”を先頭とし、だいたい昭和20年代に生まれた人たちを指す。

1970年代に多くのシンガー・ソング・ライターが登場した。
3畳一間の下宿が舞台の『神田川』(73年・かぐや姫)など、前の世代の都会生活は、つましく質素だった。ところが80年代を代表する松任谷由実さんの『サーフ天国、スキー天国』(80年)は明るく、豊かさに満ちている。

映画『私をスキーに連れてって』(87年)や、トレンディードラマも大ヒットした。
消費の担い手となった若者たちの生活を反映し、映し出されるファッションや行動が新人類世代の女性の規範になったという。

 

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特別視する“新人類”という言葉は、当時、常識外れのことがあればすぐに「新人類○○」などという使われ方をされた。それは終戦直後、戦前の価値観では理解できない行動をとる若者たちを“アプレ世代”と呼んだことに似ていた。

新人類のスターも現れた。プロ野球では、ベテラン選手に臆することなく実力を発揮する西武の工藤公康さん(63年生まれ)たちが“新人類プレーヤー”と称された。

将棋界では、10代の若さで長年君臨してきた名人を次々と破る羽生善治さん(70年生まれ)たちが、“新人類棋士”として世間を驚かせた。

経済界では、新興のパソコンソフト関連業界を成長させたアスキー社長の西和彦さん(56年生まれ)たちが“新人類起業家”として注目を集めた。

 

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新人類世代に重なり合う形で“オタク”と呼ばれる若者たちが現れた。
アニメやSFファンがコミックマーケットなどで、相手と会話する際、おたがいに「お宅」と呼び合ったことが由来とされる。

かつて若者世代は、戦争、焼け跡闇市、60年・70年安保と、共通の社会的体験で語られたが、連合赤軍あさま山荘事件(72年)などで「政治の季節」は退潮。
若者たちはウルトラマン世代、仮面ライダー世代、ガンダム世代など、子供の頃に見ていたテレビ番組で特徴づけられるようになったという。

80年代後半のバブル経済に代表される高度消費社会で、趣味的な世界への偏愛を語る“オタク”は、時代の落とし子でもあった。

21世紀に入る頃から欧州やアジアで日本のMANGA(マンガ)やアニメの人気が高まったことで、オタク文化はクールジャパン(かっこいい日本)の代表と位置づけられていく。電器街として知られた東京・秋葉原も、アニメやフィギュアの専門店が並ぶ<オタクの聖地・アキバ>へと変貌した。

ファミコンスーファミのゲームで子ども時代を過ごした“ファミコン世代”は、30代~40代前半になるらしい。スマホ世代、ネット世代もあるようだ。新人類の私も、このへんならお仲間入りができるかもしれない。


参考:『昭和時代』(読売新聞)