日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

とても悩ましい0と1%の攻防

 

<もしも・・・ 毎日に寂しさを感じたら
お酒は楽しく二人酒。ご希望により、高齢者の皆さんの晩酌に役場職員がつきあいします。3人1組でおじゃまし、飲み物は持参します。たまには村長もおつきあいします>。

こんなキャッチコピーがあった。長野県の泰阜(やすおか)村のサイトである。
「斗酒(としゅ)なお辞せず」。 一斗の酒でも辞退せずに飲むとの意味で、大酒飲みのことである。そのもじりで「孤酒なお辞せず」の左党もいる。<にぎやかな宴席も楽しいが、独りの酒もいい>という御仁である。
とはいえ、いつもおのが影との差し向かいではさびしい時もあろう。

泰阜村が10年前から乙な味のボランティア事業を始めているらしい。
村の職員が独り暮らすお年寄りの晩酌の相手を務めるもので、自宅を訪ねることもあれば役場の食堂に招くこともある。
酒やつまみはお年寄りと職員が割り勘で用意し、全職員に参加を呼びかけ、村長も杯を手に参加というから楽しい。

 

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数名での晩酌ともなると、やはり日本酒をイメージしてしまう。

日本酒好きの古今亭志ん生さんは、池田勇人元首相の気配りにたいそう喜んだそうだ。
「築地あたりであたしが一席やって、帰ろうと思い車へ乗るてえと、『これは師匠に…』といって、車のなかへ一升びんを入れてくれるんですよ。恐れいってしまいます」。半生記に書いてあった。

師匠の大好きな日本酒も、消費量の減少に歯止めがかからず、老舗の蔵元が看板を下ろしつつある。日本酒は1973年をピークにして減少傾向が続いており、1996年以降は減少ペースに拍車がかかり、1998年の日本酒(清酒)の販売量は109.5万キロリットルだったが、10年後は63万1500キロリットル。

2009年にはピーク時の35%に減少し、シェアも6.8%にまで落ちた。一方海外への輸出量は、小規模ながら徐々に増えているが、国内での市場拡大のメドは立っていないという。

 

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ビール市場も曲がり角と囁かれて久しい。
2014年のビール類(ビール、発泡酒第3のビール)の総出荷量は、10年連続で前年を下回った。

低価格で人気の「第3のビール」までもが、03年の発売から初めて減少に転じ、大手ビール各社は転機に立たされている。総出荷量は前年比1.5%減の4億2707万ケース(1ケース=大瓶20本換算)で、ピークだった94年と比べて4分の3まで減っているという。

ビールは酒税を考慮すると、利益が10%程度と大きいが、市場縮小や販売競争の激化で、儲かりづらくなっている。割安感が売り物の第3のビール発泡酒も、今後は酒税法の改正の議論で税額が引き上げられる可能性が高く、将来的な値上げは避けられない。

それならばと、各社は派生商品で巻き返しを狙い、チューハイやカクテルなど飲みやすい缶商品を増やしていることも、若年層のビール離れを加速させている要因である。

 

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サントリースピリッツから、アルコール度数「1%」のチューハイ『The O.N.E(ザ・ワン)』が発売された。

本格的な味わいを実現した、甘さ控えめのドライタイプのチューハイで<酔いすぎたくはないけどお酒のある時間は楽しみたい>というニーズに応えるために開発されたという。

また同時期にキリンビールからも、アルコール度数が1%の缶チューハイ『バタフライ』も発売されたとか。容量は250mlと、通常の缶チューハイよりも小型化し飲み切りやすいサイズにしたそうだ。(ちなみにサントリースピリッツの商品容量は350ml)

さて、こちらの開発コンセプトといえば、<酒を飲むことは好きだが、翌日の仕事が気になるといったことや、酔うと趣味が楽しめなくなるといった声があることから、手軽に飲める缶チューハイ>なのだそうだ。

 

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2009年を機に世間へ広まったノンアルコールビールは、その後、各社から商品が投入された。その市場は毎年右肩上がりで、2013年には約3倍もの勢いで成長している。

選ぶ際のポイントとしては〝ビールらしい味わい〟でおいしいもの。
そして、ノンアルコールビールといえば、(運転時などお酒が飲めない時の)代替飲料としてのイメージが強かったが、実際は夕食時など家でもノンアルコールビールを選ぶ人が増えているという。

しかし、ふつうの?酒飲みの我々は理解に苦しむところなのである。
車を運転するときや仕事前に、ノンアルコ-ルビールを飲んだことはあるが、あとはニーズを見いだせない。“「1%」のチューハイ”にしても、飲んで運転したら飲酒運転であろうし、仕事のときにはやはりダメだろう。

これらは酔いたいと思うときには必要がなく、<なんらかの枷のあるときに酔った気分になろうとする>ための不思議な飲料に思える。アナログの酔眼には、アルコール度の「0と1」で2進法になった「デジタル酒」に見えて仕方がないのである。