日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

強さは必勝法ではなく必敗法

 

明けましておめでとうございます。
いつも読んでいただけること、とてもうれしく思っております。
そして、それ以上に皆様のすばらしい記事を読ませていただけることに感謝しております。
本年も何卒よろしくお願い申し上げます。

こちら(神奈川県)も元旦は雪がチラホラと・・・。
さて、年末のこと。録り溜めていたたくさんのテレビ番組を“整理鑑賞”していたら、ある番組に思わず“目から鱗”でBD(ブルーレイディスク)へ保存。
BS1スペシャル『時代をプロデュ-スした者たち』であった。

 

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プロ野球・巨人軍のV9時代に、<ドジャース戦法が土台>だということはよくわかっていた。しかし、これほどまでに具体的な話は初めて知った。

<攻撃陣は最高のバッターでも3割台。守り切ることでの十割を重視する野球>。
9年連続日本一を成し遂げた指揮官・川上哲治監督は、ドジャース戦法を提案し徹底的に実践した。そして、そのためになくてはならなかった実行者こそが、名参謀・牧野茂コーチであった。このふたりの結びつきは、まさに「逆転の発想」だったのである。

川上さんが牧野さんを見込んだ理由というのがふるっている。
牧野さんが新聞に書いた批評が発端であった。巨人の作戦に厳しく批判的な記事であったが的を得ていた。

<厳しいといわれた川上采配がまだ甘い。自分が狙うボールを決めて打てば、4打席でせめて各打者とも1回くらいヒットが打てるのでは・・>などと、具体的な対策まで提示されていた。
生え抜き中心で固められてたコーチの中に、中日の出身である牧野さんを招くことは異例。
川上さんは自分の目指すドジャース野球の徹底に、牧野さんを必要とした。

 

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川上さんが監督就任当時の巨人は、戦力として頼れるのは長嶋茂雄選手ただ一人。3年目の王選手も並みのバッターであった。

選手個人の力量に大きく左右される時代で、西鉄の3連覇にしても中西選手、稲尾投手のふたりの大活躍で成し遂げられた。
<主力打者が打てば勝てる。エースが打たれれば負ける>。
2度の二冠王バッターと3年で89勝の大投手の力が全てであった。

一人一人が勝手なことをやっていた時代に、<突出した戦力がなくても勝てる野球はないのか>と模索したのが川上さんであった。

ドジャースの戦法』の著者で、当時ドジャースコーチでもあったアル・カンパレス氏が、“戦術フォーメンション図”を作成し大リーグで使用していた。それを基に牧野さんが巨人選手のための戦術書を作った。その冒頭には牧野さんオリジナルの「必敗法70箇条・必勝法70箇条」が掲げられ、毎回試合前のミーティングで徹底させた。

ちなみに、必敗法70箇条とは<これをやれば必ず負ける>ことを具体的に網羅し、<負けないためにはどうすればよいか>を明確化した。これもすばらしい「逆転の発想」である。

但し、必敗法に該当するプレーには罰金制が適用されるようになったため、選手にとって迷惑な部分もあったかも知れぬが、チームは確実に強くなれた。
こうして、牧野さんは川上さんの始めたチームプレーを、さらに緻密に進化させ、<僅差でものにする組織野球>を築き上げた。

 

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<自社の悪口や嫌いなところを教えて下さい>と言いながら、業績を伸ばしてきたのがユニクロという会社である。

1995年10月に、全国紙や週刊誌へ「ユニクロの悪口言って百万円」という広告を出した。そして、集まった"悪口"は一万通弱。ほとんどが品質へのクレームだった。
<安かろう悪かろう>で、“一度洗ったら糸がほどけた”等がほとんど。

この「悪口募集」の発案者であるユニクロファーストリテイリング柳井正 会長兼社長は、<たったの百万円で1万通も集めた>ことを何よりも喜んだ。

プレゼントキャンペーンなどの応募アンケートでは、商品の感想を伺うのが普通だ。消費者は当選を狙い商品を褒めちぎるであろう。褒められて喜んでいるだけの会社では向上が望めないのは明らかである。

柳井さんにとって、なによりも必要な情報こそが“悪口”だったのである。
クレームほど商品を成長させる情報はないし、そこがなによりの強化ポイントだということ。20年後の今をみると、やはり「逆転の発想」だったといえる。

 

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欠点を治そうとする時間はもったいない。長所を伸ばすことに時間を費やす方が、楽しいし時間も苦にならない。それでも、「必敗法」のように欠点の客観視ができると、案外<欠点と長所は裏合わせ>なのではないか、とも思えてくる。

欠点で愛される部分は意外と多いかもしれない。本人が知らないだけで。
<若さっておっちょこちょい>というイメージがある。裏を返すと年輩の人でも“おっちょこちょい”なところや“茶目っ気”があると若く見える。

今は死語なのかわからないが、“若年寄”という言葉がある。妙に冷静で挨拶も含めて無口である。いつもバカ笑いばかりしている自分から見て、年上にさえ感じることがある。
<欠点だからと抽象的(うやむや)にしてしまおうとする習性>は年齢に関係ないだろうが。

常日頃、<独断と偏見は大いにけっこう>だと思っている。欠点が具体化されていれば自らオープンにして説得力につなげられることもあるだろう。