日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

マクルーハンから教わること

 

マーシャル・マクルーハン(1911年~1980年)はカナダの英文学者、文明批評家である。「メディア・イズ・メッセージ」というメディア中心にて独自の文明論で、世界的に有名になった。しかし、このエントリのために、インターネット検索をしてみたところ、あまりにもヒット数が少なく、『Wikipedia』でさえも、ホンのわずかな記載だけだったので驚いた。

なぜかというと、マクルーハンはまだパソコンが存在しない時代から、インターネットのような世界を具体的に唱えていたからなのである。
マクルーハンは、映画やラジオをホットメディアと位置付け、テレビをクールメディアとした。伝える中身より、伝えるメディアによって、受けるものの質が変わるというもの。電波時代の予言者とも言われ、「未来の未来は今にあり」との発言で、未来の兆しを現在に発見する能力の持ち主だった。

 

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「メディアこそがメッセージなんだよ」と囁くマクルーハンから教わることはとても多い。
出会いは7秒のムードと7%のトークから』というエントリでの一節にある、「話の中身はコミュニケーションのわずか7%のウエイトである」という部分を考えてみる。さて、残りの93%は何だろう。これこそが、マクルーハンのいうメディアであると(私は勝手に)解釈している。どんなにいいお話をしようとしても、相手の方は話そのものよりも話し手の表情やしぐさ、そして服装などへ9割以上の関心が向くということなのである。

もし、直接の会話ではなく、なにかのメディアを通じて伝えようとする場合、映画、ラジオ、テレビ、そしてインターネットなどによって、伝え方を変えていく必要があるということである。また、伝えるためのメディアをホットとクールなどに分けて説いている。

 

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わたしはシナリオを少しやっていたおかげで、マクルーハンが受け入れやすかった。
シナリオを書くときの心構えとして言われることであるが、原稿用紙ではなくフィルムに書くつもりで描く。それは、映像化されることを前提として、予算や時間の制約があるからなのである。そういう媒体に対する作品が要求されるということである。
映画はホットメディア、テレビはクールメディア。そうなると、描き方も当然変わってくる。

映画よりセットが貧弱であるテレビでは、カメラが寄って人物などのアップが多くなる。それを想定してシーンの場面やセリフを決めていく。逆に、映画では引きの画面が多くなるので、テレビとはちがう。舞台の脚本になると、映画やテレビのようにシーンをいくつもかんたんに切り替えられないため、セリフ主体で物語を進行させる。このように、媒体に合わせて(同じテーマを伝えるとしても)書き分けるのである。

  

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さて、身のまわりのホットメディアとクールメディアについて言及してみよう。
ホットメディアはホットということで、熱く高揚するようなイメージであろうか。まだ、テレビが普及する前の戦時中では、国民の戦意高揚に映画やラジオが駆使された。テレビのない時代だったから、メディアが限られていたということもあったが、私は湾岸戦争の爆撃シーンをリアルタイムのテレビで観ていたときに、客観的で妙に醒めている自分を感じていた。また、車移動の仕事のときなど、カーラジオから得られる情報はテレビと質がちがうとよく感じる。同じような話でも、テレビよりラジオの方がホットに聴けるのである。

クールメディアのテレビは、デジタルハイビジョンで1080本の走査線数にて一枚の絵が成り立ち、毎秒30枚で動画になっているという。フィルム映画では、一コマずつが完成された絵になっている。この媒体の(構成要素の)差にも興味がある。テレビは窓のようなもので、家の窓をのぞくような感覚に適している。その中にいるのは、映画のような美形役者ではなく、近所にいるような親しみを感じるタレントがウケるとか。窓の外のように、決まりきったことだけでなく、ハプニングにも向いているようなのである。

そして、最後にインターネットというメディアについて、マクルーハンはグローバルヴィレッジ(地球村)と言っている。まだ、パソコンがない時代に、電子メディアの未来についてとしての言葉である。そして、電子メディアはクールであり、活字メディアはホットであると定義している。