日日平安part2

日常を思うままに語り、見たままに写真を撮ったりしています。

素敵な指揮者

 

2年前、深夜になにげなくつけたテレビの衛星放送で観たクラシックコンサート。そこにすばらしい指揮者がいた。それが、カルロス・クライバー(Carlos Kleiber)さんであった。

インターネットで調べたところ、カルロス・クライバーさんは、(残念ながら)2004年に74歳で他界されている。出身はドイツで、後にオーストリア国籍を取得。20世紀後半を代表する指揮者のひとり。父は世界的な指揮者であったエーリヒ・クライバーさんとのこと。

 

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カルロス・クライバーさんを観て、指揮とはまさに表現力ということを感じさせられる。

「手話」を越えた「体話」とでもいうのか、からだの動きやすばらしい笑顔で演奏者たちを楽しく導いていく。

クライバーさんが、クラシック音楽のファンから、そして多くの演奏家からも絶対的な信頼を得ていた大きな理由は、音楽と向き合う姿勢に深い誠実さが見られるからであろう。

多くのクラシック曲がある中、クライバーさんはレパートリーが少なく、演奏記録が残っているのは30曲にも満たないとか。

 

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裏を返せば、楽譜を血肉となるまで読み解き、作曲者の真意を完全に理解したという確信が持てない曲を、彼が振ることはないということであろう。

また、クライバーさんは周囲からどれだけ「第九」の指揮を請われても、「今の私ではまだ振れない」、「時期尚早だ」と首を縦に振らなかったというエピソードもある。

 

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「皆さんの演奏が勝り私が無用になること。そんな演奏が私の夢です」

演奏を指示しながら、観客として楽しんでいるようにも見える。「指揮者は第1番目の観客なり」というように。そして、調和の美というものもたっぷりと表現していた。

 

 

アンコールの定番なのであろうか『ラデツキー行進曲』では観客に向かって拍手で参加させる。そのテンポや強弱。その指揮のうまさで、あたかも楽器の名演奏をしているような気分にさせられる。

演奏者も、観客も、そしてテレビを観ている私も、一体化してカルロス・クライバーさんの世界の中で、戯れられるひとときが広がる。