夜空に万華鏡
わが家から最短距離の花火大会が毎年8月末に行われる。これが夏の終わりを告げる最後の花火ということ。私は自分が動いて花火を見に行こうとは決して思わないタイプの人間である。数十年前に何度か行ったが、あの人の多さにはあきれるだけであった。
ましてや、花火を撮ろうなどという発想はまったくない。ラッシュアワーの電車のような中で三脚広げて、おまけに暗闇の中でカメラの設定などできるわけがないのである。もちろん、どこそこで花火大会があると聞いても、自分には縁のないものと頑なに思い込んでいた。
テレビを観ながら晩酌を楽しんでいたら、花火の音が聴こえてきた。ベランダに出てみるとチラリと見えるではないか。方向としてはかなり端っこからなのであるが。家から見えるのであればと、飲みながら三脚を出してカメラも適当に設定して構えてみた。こんな調子なので、撮影の露光時間もめちゃくちゃ。
あとで見たら、光がグニャグニャ写っているだけで、花火とは思えぬ別モノがそこにあった。まあ、ものは考えようで、家から一歩も出ないのに、花火の方からやってきてくれたのだから、写りが悪いと文句もいえない。花火として見ようとするからいけないので、夏の夜空で万華鏡を見たと思えばなんとなく得した感じである。
「夏の写真2013」